手間はかかるけど美味しい!梨の育て方とコツをご紹介【鉢植えでもOK】
梨の育て方

梨は、日本で最も古くから栽培されている果物の1つといわれています。シャリシャリした食感と、みずみずしいジューシーさが大きな魅力ですよね。
他の果樹と比較すると手間はかかりますが、雪のような白い花を咲かせてくれるので、実だけでなくシンボルツリーとしても楽しめます。
今回は、そんな梨の栽培について、品種選びのポイントや栽培管理のコツなどをご紹介します。
目次
梨を育てる前に知っておきたいこと
梨は鉢植えでも育てられる

梨の栽培と調べると、多くは写真のような棚栽培での育て方を紹介されているところが多いので、「棚を用意しないといけないのかな?」と思われがちです。
しかし、立ち木でも育てられるため、他の果樹と同じように鉢植えでも育てることができます。また、地植えの場合も同様に立ち木で育てられます。
ただ、棚がある方が高品質の実をたくさん、安定して収穫できます。そのため農家さんは棚を使って栽培しているんですね。
しかし、棚は場所をとりますし準備も大変です。そのため、手軽に始めるなら立ち木での栽培をおすすめします。
梨は実がつくまで2~4年程度

梨が実をつけるまでには、鉢植えの場合は2~3年、地植えの場合は3~4年ほどかかります。
鉢植えの方が根の範囲が制限されるため、早く実をつけてくれる傾向があります。
梨の栽培カレンダー

初めにはっきりとお伝えいたしますが、梨は他の果樹より病害虫に弱く、管理作業も多いため手がかかってしまいます。しかし、ちゃんと果実が育ったときの喜びは、他の果樹とは比較にならないほど大きいものになるでしょう。
初心者の方でもポイントを押さえれば育てることはできますので、是非チャレンジしてみてください。
それではここからは、栽培カレンダーに沿って梨の管理作業の手順・ポイントを1つずつご紹介していきます。
梨の育て方①:基本作業(通年)
水やり

・鉢植えの場合
土の表面が乾いたときが水やりのタイミングです。鉢底から水が流れ出るくらいたっぷり水をあげましょう。
水やりには水の補給以外に、土の中の空気や養分を交換する役割もあります。そのため、十分な量の水をあげる必要があります。
・地植えの場合
地植えで育てる場合は基本的に水やりは必要ありません。根が地中に広い範囲で広がり、さらに地中にはある程度保水されているからです。
ただ、快晴の日が何日も続き、土が乾いてしまうと水切れを起こしてしまします。そうなると、その後の実つきが悪くなってしまうことがあります。真夏に雨が振らない日が続く場合には、土の状態をよく観察し、必要に応じて水をあげましょう。
肥料
1年の間に元肥、追肥、お礼肥の3回に分けて施します。
一度に大量に肥料を施しても、根が傷むか、吸収されないうちに根の範囲外に流れ出てしまうからです。
・2月に元肥として、ゆっくり効果の持続する有機質肥料
・5月に果実肥大を促す追肥として化成肥料(チッソNーリン酸PーカリK=8-8-8のものなど)
・9月に消耗した木に栄養を与えて回復させるお礼肥として化成肥料
を施すのが一般的です。
梨の育て方②:植え付け(11月~3月)
必要なもの

・鉢植えの場合
梨の苗
7~10号の植木鉢
スコップ
鉢底石
果樹用の土(無い場合は野菜用の土と鹿沼土を7:3で混ぜる)
(受粉樹が必要なためこれらを2セット用意する)
・地植えの場合
梨の苗×2
堆肥
石灰
有機肥料
剪定バサミ
植え付けの手順
梨の植え付けは休眠期の11月~3月の間に行うのがベストです。
・鉢植えの場合
まず鉢底に鉢底石を入れ、土を鉢の半分程度入れます。そこ苗を根を広げながら入れ、さらに上から土をいれます。
この時、接ぎ木の部分(木根元のこぶ状にプクッと膨らんだ部分)を土に埋めてしまわないように、地上に出して植えるよう注意します。
最後に水をたっぷりやれば植え付けは終了です。
・地植えの場合
地植えの場合は、植え付けの1か月前くらいに直径70cm、深さ50cm程度の穴を掘り、堆肥、石灰、有機肥料を適量混ぜ、埋め戻します。
1か月後、苗木を根を広げながら浅めに植えつけ、主枝を50cm程残して切り詰めます。最後にたっぷりと水をやれば完成です。
梨の育て方③:人工受粉(4月上旬~中旬)

ハチが花粉を運んだり、風で花粉が飛んで自然に受粉することもありますが、梨の場合は、梨の花を蜜蜂があまり好まないようで、放任しておくと上手く受粉しません。そのため、花を摘んで異なる品種の花にこすり付けて人工受粉をさせます。
人工受粉は、雄しべの葯(やく)が開いたのを確認してから行います。葯とは、雄しべの先についている花粉の袋のことです。葯が開くことで、花粉を外に出すことができます。
図のように、先が赤くなったら葯が開いたサインです。葯が赤くなっている花を摘み、別品種の雌しべにこすりつけて、人工受粉を行いましょう。
梨の育て方④:摘果(5月~6月)

梨を大きく甘く育てるためには摘果が欠かせません。摘果せず全ての実をなりっぱなしにしておくと養分が分散し、小さく甘みのない梨が出来上がってしまいます。
摘果は2ステップに分けて行います。
まず1回目は、写真のように1箇所からまとまってなっている複数の実のうち一番大きくきれいな実を残し、ほかをすべて除きます。
次に、木全体で葉25枚程度に対し、果実が1つになるように摘果していきます。葉の枚数は25枚となっていますが、1枚ずつ数えるのは大変なのでおおよそで大丈夫です。1度数えたら、あとは感覚でザクザクと実を落としていきましょう。
梨の育て方⑤:袋掛け(摘果が終わり次第)
病害虫から実を守るため、袋掛けを行います。雨が入らないように、しっかり上部の口を止めましょう。
農家さんのように大量に栽培する場合は、手間を削減するため袋掛けをしない場合もあります。しかし、その分農薬使用量が格段に増えてしまいます。
家庭菜園のような少量栽培の場合には手間、経済両面において、袋掛けをするほうが効率が良いでしょう。
梨の育て方⑥:収穫(8月~10月)

全体的に青みが抜けたら収穫適期です。果実を支え、上にクイッと持ち上げるだけで収穫できます。
果実に付いた軸は、付けたままにしておくと他の果実を傷つけてしまうこともあるのでハサミで切っておきましょう。
梨の育て方⑦:剪定(12月~2月)
梨の木が休眠期に入ったら翌年のために剪定作業をしておきます。
最初は慣れないかもしれませんが、やっていくうちに分かってくるので、根気強く続けていきましょう。
剪定する場所と順番は以下のとおりです。
①真上に伸びる枝を間引いて倒す
主枝から出る真上に伸びる枝を、1か所から出る枝を3本までになるように間引く。ひもを使い、枝を地面に対して水平に近い形に引っ張ります。最後に倒した枝の先端から1/3程度切り替えす。
こうすることで、実がなる短い枝(短果枝)の発生を促します。
②不要な枝を付け根から間引く
交差している枝や、混み合った枝、枯れ枝、下向きになった枝などを付け根から間引きます。
また、枝は切ったところから枯れ込んだり、病原菌が入ってしまい生長に影響が出てしまう恐れがあります。
それらを予防するために、太い枝を切った場合には、切り口に癒合促進剤を塗るようにしましょう。
梨の病害虫対策
梨のかかりやすい病気としてあげられるのが、「赤星病」と「黒星病」です。
赤星病は、5月以降に発生する、葉に赤褐色の斑点が現れる病気です。進行すると葉が枯れ落ちてしまいます。また、幼果にも発生することがあるため、防除が必要になります。
黒星病も5月頃から発生する病気の一種で、葉、葉柄、果実に黒い斑点が現れる病気です。発病が進むと葉や果実が落ちてしまいます。こちらも同じく防除が必要になってきます。
手軽に手に入るものでは、ベンレート水和剤・オーソサイド水和剤が赤星病・黒星病両方に登録があります。上記の農薬で効果を感じられなければ、ジマンダイセン水和剤・トリフミン水和剤あたりを試してみてください。
まとめ

今記事では梨の育て方をご紹介してきました。
「梨はどのサイトや本をみても難しいと書いてある…」確かに手間はかかりますし、病害虫に弱いという点では難しいかもしれません。
しかし、しっかりとポイントさえ押さえれば、初心者の方でも育てることは可能です。
ぜひこちらの記事を参考にして、梨の栽培に挑戦してみてくださいね。