【ブドウ農家に聞いた】種なしブドウを作るためのジベレリン処理の方法
種なしブドウを作るためのジベレリン処理とは

食べやすいということで人気の種無しブドウ。
もちろん種があるのも美味しいのですが、種が無いブドウのに比べると食べにくいのが難点です。
今回は、そんな種無しブドウを家庭菜園で育てるための「ジベレリン処理」の方法をご紹介します。
種無しブドウはジベレリンという植物ホルモンによる処理によって種無しブドウが出来ます。
「え!?そんなこと簡単にできるの?なんか難しそう…」と思うかもしれません。でも大丈夫です。ちょっとしたポイントを守るだけで、家庭菜園でも簡単に種無しブドウを作ることはできます。
そこでこの記事では、
・種無しブドウを作るためのジベレリン処理に最低限必要なもの
・種無しブドウを作るためのジベレリン処理のタイミング
を中心にお伝えしていきます。
さらに、ブドウ栽培のプロであるブドウ農家さんにも直接ポイントを聞いてきました!ぜひ参考にして、種無しブドウづくりにチャレンジしてください。
この記事は、お忙しい方のために、目次の見出しを追うだけでも内容を理解できるようにしています。
詳しく知りたい方は、このまま読み進めていただくか、気になる小見出しをクリックしてみてください。
目次
ジベレリン処理に必要なもの1:
ジベレリン
種無しブドウを作るにはジベレリンという植物ホルモンでの処理が必要です。ブドウにはもともと種のない品種もありますが、スーパーなどで販売している種無しブドウの多くがこのジベレリン処理をされてつくられています。
家庭菜園で使うのであれば市販のこちらの商品がおすすめです。

ジベレリン錠剤 25mg/錠 1シート8錠入
ジベレリン液はブドウごとに適正な濃度があるのですが、シャインマスカットやピオーネなどの大粒品種であれば、水1Lに対してこのジベレリンを1錠入れれば適正濃度(25ppm)になります。
ジベレリンは年に2回作業があります。こちらは8錠入っているので、1度購入すると4年使用することができます。
ジベレリン処理に必要なもの2:
1Lのペットボトル 1つ

ジベレリン液を作るのに使用します。
家庭菜園の場合、適正な濃度のジベレリン液を作るには水が1Lあればいいので、1Lのペットボトルを使えばはかりで計量しなくても必要な水を用意することができます。
この水1Lを入れたペットボトルにジベレリンを1錠入れるとジベレリン液が完成です。
ジベレリン処理に必要なもの3:
ジベカップ
作ったジベレリン液にブドウをつけるときに使うカップのことです。
専用のものも販売されていますが、年に2回しか使用するものでは無いのでわざわざ購入しなくてもいいです。
1Lのペットボトルの上部を切り取ったものを使うことができます。
1回目のジベレリン処理のタイミング

1回目のジベレリン処理はブドウの花が満開~3日目の間に行います。満開とは、ブドウの花が上から下まですべて咲き切った状態のことを指します。
写真は、9割満開であと1~2日で満開を迎える状態ですので参考にしてみてください。
満開より早い時期にジベレリン処理をしてしまうと、房が曲がってしまい使い物にならなくなってしまいます。
また、3日目より遅いと種が抜けきらず残ってしまいます。
1回目の処理のタイミングについて農家さんに聞いてみると、「天候や日当たりなどの関係で房の上部は花が咲いているけど、下のほうは全然咲いていないということもあるよ」とのことでした。
そんな時は全体の9割程度咲いていればジベレリン処理をしているとのことです。
種が残ってしまうので、しっかりと房の一番上まで浸けてあげてください。
よーく観察して、1回目のジベレリン処理のタイミングを見極めましょう。
2回目のジベレリン処理のタイミング

2回目の処理は、1回目の処理日から10日~15日目に行います。
写真は2回目適期の状態です。
ジベレリンは種無し効果の他にブドウの粒を大きくする効果もあり、2回目はどちらかと言えば粒を大きくする目的がメインです。
改めてジベレリン液を作り、処理をしていきます。
「1回目の処理の時のジベレリン液が余ってるんだけど使えないの?」と思う方もいるのではないでしょうか。
こちらも農家さんに聞いてみると、「冷蔵庫に置いておけば使えなくはないけど効果は落ちるよね」とのことでした。
新しいジベレリン液を作るようにしましょう。
1回目の時と同じように、しっかりと房の一番上まで浸けて、水滴を振るい落とせば2回目のジベレリン処理は完了です。
ジベレリン処理後に雨が降ってしまったら

ジベレリン処理後に雨が降ってしまったらせっかく浸したジベレリン液が流れてしまいます。そんな時はどうすればいいのでしょうか。
1回目の処理と2回目の処理で対応が変わります。
1回目のジベレリン処理後に雨が降った場合
1回目の場合は8時間、連続5mm以上の雨が降ると再処理の必要があります。
「処理から72時間後までに相対湿度が80%以上で8時間を経過する」ことが必要と言われています。経過前に連続5mm以上の降雨では再処理となります。"
参考:NOSAI山梨/ブドウの栽培管理
2回目のジベレリン処理後に雨が降った場合
2回目は経過時間によって対応が異なります。
"処理液乾固後、1時間経過していれば降雨量10mmまでは、2時間経過していれば20mmまでは、3時間経過していれば30mmまでは再処理は不要となります。再処理濃度は50ppmで行ってください。"
参考:NOSAI山梨/ブドウの栽培管理
2回目のポイントは再処理濃度が50ppmになることです。
先ほどご紹介したジベレリンを使う場合、1Lの水に2錠のジベレリンを入れると50ppmになります。
降雨量については、1時間以上経過していれば、よほどの大雨でない限りは大丈夫といえそうですね。
時間当たりの降水量はアメダス実況で見ることができます。
プロに聞いたジベレリン処理のポイント1
ジベレリン処理のは朝or夕方の曇りの日に行うのがベスト
ジベレリン処理を行う時間や天候も大事です。
仮に、カンカンに晴れた日中にジベレリン処理を行ってしまうと、ブドウの実にジベレリン駅の水滴が残っていた場合にその箇所が日焼けを起こしてしまいます。
日焼けをした粒は食べられなくなってしまうので、起こらないように予防をしてあげることが大事です。
また、水滴を残さないために、ジベレリン処理後に軸をもって房を揺らし、水滴を落とすことも日焼け予防に効果的です。
ジベレリン処理を行うのは朝、もしくは夕方の曇りの日を狙って行いましょう。
プロに聞いたジベレリン処理のポイント2
確実に種を抜きたいならストレプトマイシン(ストマイ液)使おう

ジベレリン処理だけでも大抵の種は抜くことができるのですが、何%かの割合で種が残ってしまう場合があります。
プロのブドウ農家さんの中にとっては、種なしブドウとして販売しているのに種が入っているのは困りますよね。
なので、種なし率を100%に近づけるために、1回目の処理時にジベレリン液に追加してストレプトマイシンという薬剤を入れる方もいらっしゃいます。
殺菌剤 ヤシマ ストマイ液剤20 100mL
1Lの水で作ったジベレリン液に、1ml加えれば適正濃度(200ppm)になります。
「絶対に種なしじゃないと嫌」という方はぜひ試してみてください。
茨城県農業総合センター園芸研究所の試験でも効果が実証されています。
「シャインマスカット」の無核化にはストレプトマイシン処理が有効
プロに聞いたジベレリン処理のポイント3
着粒安定、果粒肥大のためにフルメットを入れる農家もいる
ストレプトマイシンの他に、フルメットという薬剤を追加で入れる農家さんもいます。
フルメット液剤 10ml
フルメットの役割は着粒安定、果粒肥大です。
ブドウは品種によって着粒が悪い場合があります。
着粒が悪いというのは、花が咲いても着果せず、実つきの悪いスカスカの房になるということです。
プロの農家さんはスカスカのブドウを販売することはできないので、フルメットを処理をすることで実つきを改善するのです。
また、フルメットには果粒肥大もあります。
見た目にもしっかりとしたブドウができるんですね。
1Lの水で作ったジベレリン液に、5ml加えれば適正濃度になります。
フルメットもストレプトマイシンと同様に、1回目の処理時にジベレリン液に追加します。
ジベレリン、ストレプトマイシンと一緒に入れることも可能です。
「せっかく作るならよりきれいなブドウが作りたい」という方はフルメットも試してみてください。
ジベレリン処理の方法まとめ

種無しブドウを作るためのジベレリン処理は、実はそんなに難しいものではありません。
ポイントは、以下の4点です。
・タイミングを守る
・ジベレリン液の濃度を守る
・しっかりと房全体にジベレリン液を浸ける
・漬けたあと水滴を振るい落とす
あとは必要に応じてストレプトマイシン、フルメットを使えば、よりいいブドウができることでしょう。
是非参考にして、美味しい種無しブドウ作りにチャレンジしてくださいね。