【柿の栽培】農家さんに聞いた最低限の管理方法:品種選びのポイントも
家庭菜園でもできる美味しい柿の栽培

日本の秋の味覚として昔から存在する「柿」。
その歴史は古く、縄文時代や弥生時代の遺跡から柿の種の遺跡が発掘されたとか。
「柿が赤くなると、 医者が青くなる」と言われるほど栄養価が高いことでも知られています。
今回は、そんな柿の育て方をご紹介します。
しかし、庭で柿を育てようと考えても、
「どんな品種を選ぶといいの?」
「庭の広さはどれくらい必要なの?」
「初心者の私でもできるの?」
といろんな疑問が出てくると思います。
そこでこの記事では、
・柿栽培の特徴と品種の簡単な選び方
・柿を育てるために最低限必要な作業
をご紹介していきます。
また、柿栽培のプロである柿農家さんにも直接コツを聞いてきました!
ぜひ参考にしてください。
目次
柿を育てる前に知っておきたい基本知識
柿の栽培カレンダー

柿の基本的な管理作業は「摘果」「収穫」「剪定」の3つだけです。
人工授粉と書いてありますが、絶対必要な作業ではありません。
なので柿栽培は、「忙しいけど何か果樹を育ててみたい」方におすすめ。
また、柿は地植えだけでなく鉢植えでも同じように育てることができます。
鉢植えで育てると木が大きくならないので、庭のスペースが限られている場合は鉢植えで育てるのがおすすめです。
鉢植えの場合は3~4年、地植えの場合は4~5年ほどで実をつけます。
鉢植えは根の範囲が制限されるため、早く実をつけてくれる傾向があります。
柿の品種の選び方

柿には1000種類ほどの品種があり、これから柿を育てる方にとってはどれを選ぶのがよいか困ってしまうかと思います。
簡単な選ぶポイントをご紹介しますので、品種選びの参考にしてください。
甘柿と渋柿から選ぶ
柿を生で楽しみたいのか、干し柿にするなど渋抜きをするのかで選ぶ品種が変わってきます。
「生の柿の甘さを楽しみたい」と考えている方なら甘柿がおすすめ。
富有や大秋が有名な品種です。
渋抜きをする必要がなく、すぐ食べることができるメリットがあります。
甘柿を育てる時に気を付けたいのが、住んでいる地域の気温。
甘柿は元々渋く、成熟するごとに渋みが抜けていくのですが、成熟するときに気温が低いと渋みが抜けません。
甘柿の生育には年平均で13℃以上、4~10月の平均で19℃以上が必要なので、甘柿を育てるなら関東以西がいいと言われています。
甘柿を育てたい場合は、住んでいる地域の平均気温を確認する必要があるでしょう。
一方、渋柿は温度をそれほど必要としないため東北地方以南であればどこでも育てることができます。
しかし、食べるときは渋抜きをするか、干し柿にする必要があります。
ひと手間かけることで甘くなり、美味しく食べることができます。

受粉樹が必要かどうかで選ぶ
柿は品種によって受粉樹が必要なものと必要でないものに分かれます。
受粉樹なしで実をつける品種は、1本だけを管理すれば良いので育てる方は手間はかかりません。
また、木1本分のスペースがあれば育てることができるので、庭のスペースに余裕がない方も植えることがきるのもメリットです。
受粉樹が必要な品種の場合は、2本管理しないといけなくなりますが、たくさんの実を収穫することができるようになります。
受粉樹不要な品種であっても、受粉樹を一緒に植えるとが実つきがよくなります。
もし庭のスペースに余裕があるのであれば、どちらの場合でも受粉樹を植えるのが一番おすすめです。
ちなみに、柿の受粉樹としてよく植えられている品種には禅寺丸、筆柿があります。
柿の植えつけ(11~2月ごろ)
柿の植え付けは休眠期の11~2月ごろの間に行うのがベストです。
・鉢植えの場合
鉢底に鉢底石を入れ、土を鉢の半分程度入れます。
そこに苗を根を広げながら入れ、さらに上から土をいれます。
この時、接ぎ木の部分(木根元のこぶ状にプクッと膨らんだ部分)を土に埋めてしまわないように、地上に出して植えるよう注意します。
次に、苗の主幹を1/3程度切り詰めます。
こうすることで春以降に勢いのよい枝を伸ばすことができます。
最後に水をたっぷりやれば植え付けは終了です。
・露地植えの場合
植え付けの1か月前くらいに直径70cm、深さ50cm程度の穴を掘り、堆肥、石灰、有機肥料を適量混ぜ、埋め戻します。
1か月後、苗木を根を広げながら浅めに植えつけ、鉢植えと同じように主枝を切り詰めたっぷりと水をやれば完成です。
柿の仕立て方

鉢植え、露地植えともに「変則主幹形仕立て」がおすすめです。
変則主幹形仕立てとは、最初は縦長に仕立て、木が高くなったら主幹を途中で切り戻し、側枝を伸ばし樹形を低く保つ方法です。
他には「開心自然形仕立て」でも育てることが出来ます。
開心自然形仕立ては、骨格となる枝を株元の低い位置から2~4本発生させ、樹高が低くなるようにひもなどで枝を斜めに誘引する方法です。
2種類とも木を低く保つ事ができるので、作業がしやすくなります。
家庭菜園におすすめの仕立て方です。
柿の周年作業
水やり
・鉢植えの場合
水やりのタイミングは、土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るくらいまでたっぷり水をあげましょう。
水やりには水の補給以外に、土の中の空気や養分を交換する大切な役割もありますので、十分な量の水をあげる必要があります。
・地植えの場合
地植えで育てる場合は基本的に水やりは不要です。
根が地中に広い範囲で広がり、そのうえ地中にはある程度雨も保水されているからです。
ただ、晴天の日が何日も続き土が乾いてしまうと水切れを起こし、その後の実つきが悪くなってしまうことがあります。
真夏に降雨がない日が続く場合には、土の状態をよく観察し、必要に応じて水をたっぷりあげましょう。
肥料
1年の間に元肥、追肥、お礼肥の3回に分けて施します。
一度に大量に肥料を施しても、根が傷むか、吸収されないうちに根の範囲外に流れ出てしまうからです。
2月に元肥として、ゆっくり効果の持続する有機質の肥料、7月に果実肥大を助ける追肥として化成肥料(チッソNーリン酸PーカリK=8-8-8のものなど)、収穫後に消耗した木に養分を与えて回復させるお礼肥として化成肥料を施すのが一般的です。
柿の管理作業
柿の人工受粉(5月ごろ)

柿は基本的に人工授粉をしなくても果実がなります。なので絶対必要な作業ではありません。
実つきが悪い場合や、種が入らないと渋みが抜けない不完全渋柿を育てる場合に行います。
人工授粉の手順は以下の通りです。
①小さい釣り鐘型の雄花(写真が雄花)を摘み取り、花びらを取って雄しべをむき出しにする
②雄しべを雌花の雌しべにこすりつける
必須ではありませんが、前年に「実つきが悪いな」と感じた場合、翌年は人工授粉をしてあげるとよいでしょう。
柿の摘果(7月ごろ)

摘果は柿の栽培の中で一番大事な作業です。
柿は放っておくと実がなりすぎてしまいます。実がなりすぎると翌年実がならない「隔年結果」を起こしやすいので、しっかりと摘果をします。
隔年結果とは、実がたくさんなる年(表年)とならない年(裏年)を交互に繰り返すようになってしまうことです。
柿の場合は7月上旬に1枝1果に間引き、下旬に葉25枚に1果になるように調節します。
上向きの実や、枝の根元に近い実を優先的に落としていきます。
できた果実を落とすのはもったいない気もします。ですが翌年のことを考えると「摘果しないほうが断然もったいない」ので、そのままにせずしっかり摘果しましょう。

柿の収穫(9~11月ごろ)

きれいな橙色になれば収穫適期です。
貴秋や富有のような晩成品種は霜が降りてしまうと傷んでしまう可能性があるので、適期になり次第収穫するようにします。
柿の剪定(1~2月ごろ)
収穫が終わったら翌年のために剪定作業をしておきます。
柿は放っておくと、高さ10m程と大木になってしまうので、幼木のころから剪定をしてコンパクトになるように心がけます。
剪定する場所と順番は以下のとおりです。
①樹の広がりを抑えるように何本かの枝をまとめて切る
②交差している枝や、混み合った枝、枯れ枝、下向きになった枝など不要な枝を切る
③残った枝の先端を1/3程度切り詰める
枝は切ったところから枯れ込んだり、病原菌が入ってしまい生長に影響が出てしまう恐れがあります。
それらを予防するために、太い枝を切った場合には、切り口に癒合促進剤を塗るようにしましょう。

まとめ
柿を栽培する時の大事な点は以下の通りです。
・柿は1000種類ほど品種がありますが、「甘柿か渋柿か」「受粉樹を植えるスペースがあるか」「手間をどれくらいかけることができるか」で選ぶ品種をある程度絞り込むことができます。
・柿で一番大事な作業は摘果。摘果さえしっかりしていれば毎年実を付けてくれます。
・今年実がなった枝には翌年実がなりません。1/3程度切って翌年に備えましょう。実がならなかった枝は翌年実がなるのでそのままにしておきましょう。
品種選びさえ間違えなければ、病害虫にも強く作業も少ないので初めての果樹栽培におすすめ。
管理作業は一見難しそうに感じますが、やってみると意外と簡単。
こだわればいくらでもこだわることはできますが、最低限上記のことをしていれば柿を育てることができます。
ぜひ、柿の栽培にチャレンジしてみてくださいね。